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ベンチに身体を横たえ、瞼を閉じる。
閉じた瞼の裏側からでも感じるお日様の力強い光の粒子
ゆっくりと、でも身体中に行き渡るように思いっきり吸い込む爽やかな空気
ほのかに香る木々の青々しさ
少しづつ、少しづつ、心と身体から負の気配を吐き出す。
この公園でもこの時間が、今のわたしを生かしている。
「Moon river wider than a mine ~♪」
そんなわたしの耳に突然、聞き覚えのあるメロディが飛び込んできた。
それもビックリするくらいの美声
滑らかなのにどこか引っ掛かりのある耳に残る声質
どこか耳元で囁かれているように感じるウイスパーボイス
英語が意味を成さず音として心地いいと感じる。
ネイティブが歌っているのか?
わたしはその歌声に一瞬で心を奪われた。
全神経でその歌声の全てを余すことなく堪能したい。
無意識にそう思ってか、歌声以外の情報はわたしには存在しなくなった。
繰り返される『Moon River』
全身がその歌声に包まれる感覚に、心が震えた。
何も考えられず、頭の中は真っ白だ。
ふと我に返り気付くと歌声は消え、
柔らかな日差しの降り注ぐ 中で、公園のベンチで涙が止まらなくなったわたしだけが取り残されていた。
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