第1話

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眠れなくて、でもなんとか仕事こなして青葉といつもの居酒屋に直行した。 昨日、ほんと久し振りに青葉見た気がする。 秘書課は企画の階上だけどよくうちのフロアの喫煙ルームに青葉来てたから。 …まさか、俺に会いに、とかじゃあるまいな… でも最近とんと見掛けなくなった。 …あ、結婚しようかな、って言ったから?…いや、いくらなんでもそれは自意識過剰かな? 昨日青葉を引っ張って居酒屋に向かう道すがら初めてうるっときた。 それまで泣けなかったのに、 青葉見て、何だか安心して、そしたら妙に泣きたくなった。 俺の中で青葉は泣いてもいい奴に分類される。 もう何年も前、企画にいた時振られて泣いてしまったのを見られちゃって、慰められちゃって、それ以来青葉と二人で飲む時俺しょっちゅう泣いてる… あー、情けないねぇ。 イケメン等の理由であんま一緒にいたくはないんだけど、やっぱり自分を持ち上げてくれる青葉といると気分がよくて、やけ酒もぐんと進んでつい言っちゃったんだよな、 俺が女だったら絶対青葉を好きになってる! ってなー いや、もちろん「つい」で冗談だったけど…、まあちょっとは本気だったかな。だって優しーんだもん。 頭がくらんくらんするけれど、昨日振られてるんだけど、もうその頃には酒も進んで心底陽気だった。 「僕も桂木が好きだよ」 確かに青葉はそう言ったんだけれどもちゃんと聞き取れて内容も分かっていたのに頭が半分溶けてる俺は「じゃー、両思いだな、あはは!」って言ったんだよ、言っちゃったんだよ、頭いてぇ! それから…俺が酔っ払いなのをいい事に両思いだからっつって手ぇ繋いであいつんちに行って、…そ、そ、うぎゃあ! 思い出したくない! まさか両思いを押し通してあんな事するなんて、あれは俺の知ってる青葉じゃ無かった。 男は狼って身をもって知る日が来るとは思わなかった。 でも、…まあ、その、正直、嫌ではなかったというか… いや、やってる事は激しく抵抗があったんだけれども、あんな、…あんな風に求められて、愛されるのは悪くなかった気がする。 眠りに落ちる前、青葉は 「こんな日が来ると思わなかった。嬉しい、本当に嬉しい」 って泣いた。 あの時声が震えてた。
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