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「「あ」」
そのとき、駅の構内に鐘の音が鳴り響いた。
時刻を告げる時の鐘が高い天井に反響して柔らかな音を奏でる。
それはまるで教会の鐘の音のように聖夜の夜を優しく包んだ。
「…Merry Christmas」
ゆっくりと身体を離しながら、私の顔を見下ろして柊が言う。
「…Merry Christmas」
繰り返すように、私も彼の顔を見上げて言った。
お互いの顔を、大きなツリーの光が優しく照らす。
柊の笑った顔。
彼は、こんなに穏やかに笑う人だっただろうかと、頭の片隅でぼんやりと思った。
鐘の音に溶け合うように、私たちはどちらからともなくそっと唇を重ねた。
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