第1話『少女と少年の運命が交差する日』

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 朝、5時を少し過ぎた頃か。  使用人にも目覚まし時計のアラームにも起こされずに、一人で起きる。  冬の朝の寒さに軽く身体が震えるが部屋のエアコンをつければ直ぐに部屋は暖まった。  カーテン越しから窓の外を見れば、まだ暗い。   (仕度をしよう)    ベッドから抜け出し、クローゼットへと向かう。  常に清潔に、と洗濯されたカーペットを踏む感触が気持ちいい。  カーペットを通り、クローゼットの前に立つ。  開ければ綺麗に洗われた私服や学校の制服が何着か、並んでいた。  制服がかけられたハンガーを取る。制服はクリーニングに出されていたらしく手触りがいい。  寝間着を脱ぎ、制服に袖を通す。   「…うん。いいな」    思わず、呟いていたが拾う者はいない。  使用人も起こしに来るのが大体、5時30分頃だ。  そういえば、学校の生徒は口々に母親や父親に叩き起こされたのだとぼやくが…。  自分は物心ついた時から母や父に起こされた記憶は一切、無い。  考えて思考を振り切る。愛情など今更、求めたところで応えなどあるわけも無い。  それは幼い頃に嫌と言う程に思い知らされて来た。   (顔を洗って、朝食を食べて、早く学校に行こう)    学校に通うようになってから、もうずっと逃げ場所は学校になっている、
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