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「ねーねー、そん時、
手も出して貰えたの?」
祐希の問いは
残念ながら黙殺された。
「ねえ、お母さん。
お父さんのどこが
好きだったの?」
「うーん…そうねー」
母は父の方を見ながら、
「すっごく優しいのに、
…無愛想なところかな」
父の背中はとても
居心地が悪そうで、
わたしは思わず
笑みを浮かべた。
「でも、いいの?
こんなに大切なもの……」
「あら、貸すだけよ。
自分の宝物は、
短いスカート履いて
目の前をウロウロして、
好きな人に
買ってもらいなさい」
母の笑顔の後ろの方で、
ぐしゃ、と新聞紙を
握りしめる音がした。
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