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そこにタイミング良く、
カラカラーン、という
ドアベルの音が響いた。
シェフが振り返った瞬間、
わたしは自分の分の
フォアグラをフォークで刺し、
素早く祐希の口に収めた。
「おお、カナちゃん、
いらっしゃい」
「お久しぶり、木戸さん。
…あれ、レナちゃんまだ?
ちょっと早かったかな。
この後、お客さんの
同伴があって……」
「いや、すでに
可愛いお客さんが来てるんだ」
「え?」
カナさん、と呼ばれた
美しい女性は、
わたしたちの方を覗き込んだ。
ぴょこんと立ち上がり、
頭を下げる。
「はじめまして、椎名です」
「…椎名です…」
祐希は半分腰を上げて、
不格好なお辞儀をして見せた。
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