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よろめきつつ王妃に支えられて立ち上がると、他が目に入らないかのようにナサムを凝視し、震える手で彼の首に下げられたペンダントを指差す。
「黙って石の欠片を持ち出した罪を…その身を持って償え…」
国王が呟くように言うとペンダントが輝きだし、伝染するようにナサムの体も七色に輝き出した。
「あ…っ」
ナサムの靴の先から石化が始まる。
国王が再び王座に腰を降ろし今度は隊長を見やると、隊長本人はナサムと国王を交互に見比べていた。
「隊長殿」
国王と目が合っている時に声をかけられて、隊長は反射的に振り向く。
「私はじきに、ここに居られなくなります。そうしたら軍隊は都から強制的に排除されます…スミマセン」
「な!?」
隊長は一瞬絶句したが、次の瞬間には身を翻しナサムを置いて兵士達を動かしにかかっていた。
「全隊に伝達!!
撤退の準備!!
闇の波に飲まれるなっ!!」
隊長の言葉に伝達の術士達が世話しなく動き始め、彼らの手から暗号音を発する魔法の鳥が羽ばたいて行く。
……………☆……………
「華化水っ!」
術士の杖から光る網が飛び出して20人位まとめて捕縛する。
「輪化風っ!」
幾つもの風のリングが手裏剣みたいに兵士に向かって行き、かすっただけで風にがんじがらめにされる。
「銀化水っ!」
暴れる者には視界を奪う目つぶし。
「水竜舞っ!」
束縛呪文を受けた兵士達がまとめて飛ばされた。
そんな中、都の上空を伝達鳥が飛び回る。
そして鳥達を追うように七つの光が八方に飛び散る。
その光はナサムのペンダントの石が弾けて発生したものだった!
しかし、石化は止まらない。
そのすぐ近くの王座では、国王に死の影が降りて来る。
身体が力を失い、左に傾き、隣で支えていた王妃に頭を預けた。
「外からの干渉がなければ、今までの平和が続きましたのに…」
王妃は国王の頭を抱いて膝をつくと、そのまま目を閉じた。頬を次々と涙が伝う。
しかし、唇をかんで王妃は立ち上がると、国王を真っ直ぐに座らせて手を離すと大きく息を吸い込む。
「還身化水・拡散」
呟いて手の平を胸に当てると、王妃の身体が透けていき…そして、意識が都全域に拡散して行く。
「私は、ウィルタータを愛しております。
今までも、そしてこれからも愛し続けるでしょう。
民達よ。私達と精霊達で都の中に火の心を封じます。
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