5/13
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
想像していたよりずっと広い六本木ヒルズ。行き交う人は楽しそうで、街並みもクリスマス一色。 愛媛を出て、もうすぐ5時間が経つ。 直ぐに会えると思っていたのに。 まだ彼には会えない。 混み合う店内では背中に貼ったカイロがやけに熱く感じる。 斜め前の席に座る家族連れの仲の良さが羨ましくて。 並んで椅子に座る恋人たちの笑う声が耳障りで。 どこか遠くに聞こえる救急車のサイレンに溜息を深くついた。 携帯の画面に指を滑らせて、顔を上げた。 tru…trutrutru… 「もしもし?」 『里穂? 今、どこだよ!』 待ちに待った彼からの電話に肩の力が抜けていく。 『本当に東京に来てるのか?』 『誰かと一緒なの?』 早口で次々と質問責めに合う… それが嬉しくて、自然に顔が綻んでいく
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!