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日曜の朝、静かに自分の部屋を出た。薄暗い玄関でブーツのファスナーを上げた所で、廊下の電気がついて母の声がした。
「里穂?こんな朝早くからどこ行くん?」
「あ…ぇっと、あのね」
慌てて立ち上がった私を
パジャマにダウンベストを羽織った母親は眉間に皺を寄せて見つめている。
コソコソとしている姿を見つけられ、叱られた子供の頃を思い出す。後ろめたから声は小さく視線は揺れる。
「あ、えっと…。と、東京に
東京に…行ってくる」
「ふぅん。夕飯は、要らんの?」
「うん。あ。あのね、一泊するけん…」
いつもよりも綺麗に着飾った私を母はしっかりと捉えている。
「寒いから、気を付けて行きなさいよ」
そう言うと母は台所へと入っていってしまった。
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