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想像していたよりずっと広い六本木ヒルズ。行き交う人は楽しそうで、街並みもクリスマス一色。
愛媛を出て、もうすぐ5時間が経つ。
直ぐに会えると思っていたのに。
まだ彼には会えない。
混み合う店内では背中に貼ったカイロがやけに熱く感じる。
斜め前の席に座る家族連れの仲の良さが羨ましくて。
並んで椅子に座る恋人たちの笑う声が耳障りで。
どこか遠くに聞こえる救急車のサイレンに溜息を深くついた。
携帯の画面に指を滑らせて、顔を上げた。
tru…trutrutru…
「もしもし?」
『里穂? 今、どこだよ!』
待ちに待った彼からの電話に肩の力が抜けていく。
『本当に東京に来てるのか?』
『誰かと一緒なの?』
早口で次々と質問責めに合う…
それが嬉しくて、自然に顔が綻んでいく
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