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「ごめんな。メールに気付かなくて」
私を見つけた彼は、とても嬉しそうに笑ってくれる。
当然の様に差し出された左手は
やっぱり冷たくてちょっと汗ばんでいて。離れないように、強く絡められた私の右手。
見上げるいつもの首の角度の先には、愛しい横顏
夢みたいだけど、現実。
嬉しくて恥ずかしくて言葉にならない。
「どうして、六本木?
渋谷とかの方が里穂が好きそうな店が多いんじゃないかな?」
絡めた指に力が入って、彼を見上げた。
「イルミネーション…
ふたりで見たかったんやもん
テレビで見たのが六本木ヒルズのトコやったの」
「え、イルミネーション好きだった?」
「もう!会いに来たのに!」
離そうとした手をグッと引き寄せられて、彼のダウンジャケットが頬に触れた。
「うれしい…」
小さく聞こえた彼の声に、顔は緩んでいく。
「里穂、クリスマスのプレゼントを買いに行こう」
彼に手を引かれて、クリスマス一色の東京の街を歩き始めた。
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