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「そろそろ、イルミネーションつく頃だな。六本木ヒルズまで引き返そうか?」
今年はいつもより寒く感じた冬の始まり。繋ぐ相手のいない右手は、コートの中で握りしめてばかりいた。
「東京は寒いだろ?」
冷えた手は、優しく包まれて
容赦なく吹きつける北風からは、隣に立つ彼に守られて
彼の腕に寄り添う
陽が沈み、街は一気に華やかに煌めきはじめた。
「あ…」
「この街は、どこでもイルミネーションだらけだよ。凄いな」
行き交う人達も煌めく街並みを見渡し、白い息を吐く。
「里穂」
「ん?なあに」
「里穂…」
見上げる彼はただ、名前を呼ぶ
「里穂」
指をギュと絡められ
口元を緩めて
繋ぐ手をワザと振って歩く
「なあに?どうしたん?」
微笑む彼を見上げ、私もつられて笑う
「好きだよ、里穂…」
「ぇ…」
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