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「わたしは、春山くんが 退院してすぐ、小児病棟に 移動になってしまったから、 彼女がどうなったのか、 詳しい経緯は知らないの。 ごめんね。お役に立てなくて」 「そうですか」 わたしは笑顔を作った。 「わたしこそ、変な事を 訊いてしまって、 すみませんでした」 それじゃまた、と 頭を下げ、歩き出す。 足を進めながら、わたしは 激しくなる鼓動を 抑えきれずにいた。 手にした鞄を胸の前に抱き、 その手にぎゅっと力を込める。 自然と歩調が早くなり、 わたしはほとんど 小走りで廊下を進んでいた。 ――考えもしなかった。 そんなこと、…疑いもしなかった。
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