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インドネシアは俺にとって実は見知らぬ国ではない。幼稚園から小学3年生まで、父の仕事の都合で首都ジャカルタに住んでいた。
最近の様子は詳しくないとはいえ、今回も唯が行く前にいくつかアドバイスをした。
ー 道路では車が渡る人のために止まってくれると思うな。信号のないところでどうしても渡りたければ、地元の人が渡るのにくっついていけよ。
彼らはタイミングを計るのが上手いから、などと。
年末進行のこんな時期に、数日間でも休みを取るのは正気の沙汰ではなかった。
“あと少しだけ待てないのか? 正月休みがあるだろう”
正論だ。でもそこまでもう待てない気がした。
頼み込んでようやく休みをもらい、すぐに旧友アグスに連絡を取った。
アグスは俺がジャカルタに家族と住んで、インターナショナルスクールに行ってた時のクラスメートで、その後も交流を保った長年の友人だ。
母親が日本人なので日本語を上手にあやつるが、お手本がお手本のせいか、ちょっと女性的な言葉使いをする。
土地勘のない俺は彼に頼み込んで、唯が滞在する田舎の村まで同行してもらうことにした。持つべきものはなんとやら、だ。
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