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「松田はいちいち、可愛いことを言うよね。僕を、煽ってるとしか思えない」
そう言って、床に俺を押し倒す。間髪おかず、深く唇を合わせてきた。
キスしながら俺のワイシャツのボタンを、震える手でやっと外していく。
「山上……?」
「やだな。今頃、緊張してきた……」
苦笑いをする山上の手を、ぎゅっと強く握ってやる。
「大丈夫だから。俺はお前のこと、嫌いになったりしないから、思いっきり抱けよ。欲望の赴くままに」
「松田……ありがとう」
目を赤くさせながら、はだけたワイシャツから、そっと俺の首の付け根を触る。
「まだ音楽室で付けた口痕、残っていたんだな。何か嬉しい、松田が僕のモノみたいで……」
「何言ってんだ。俺は一年のときからずっと、お前が好きだったんだぞ」
「そうだったんだ。僕はてっきり、同じクラスになってからだと思っていたから」
「山上のモノだよ、俺は。好きなだけ口痕、付けろよ」
俺が言うと同じ場所に、前回よりも強く噛んで、口痕を付ける。
「いっ……!」
「好きなだけ、付けていいって言ったんだから、覚悟しろよ。痛いって喚いても、途中で止めないからな」
「えっと、やっぱ、ほどほどで……」
「男なら、一度言ったことは守れよな。外にも中にも俺の痕を付けて、忘れられないようにしてやる」
怖気ずく俺に、さっきまでの緊張はどこへやら、山上は果敢に責める。
首筋を下から上へ唇を滑らせたと思ったら、左耳たぶを甘噛みした。
「んんっ……」
何とも言えない快感が体に走って、鼻から抜けるような、甘い声が出てしまう。
「松田、僕は忘れないよ。お前を好きになって、本当によかった……」
耳元で優しく告げられる言葉に、俺は思わず泣いてしまった。
俺も山上を忘れない。
漆黒に俺を染めていく、お前を忘れたりはしない。最後に告げられたこの言葉を胸に抱いて、しっかりと生きていく。
そう思ったのだった。
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