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――おいで おいでよアリス 君の王国へ
――――僕らの楽園へ
目を覚ますと、そこは普段と何ら変わらぬ自分の部屋だった。
(また、あの夢か・・・)
アリス・ベイリーはベッドに寝転がったまま考えた。
どこからともなく声が聞こえてくるあの夢。
それはアリスが物心ついた時からずっとだった。
家族に話しても本気にしてくれない。
いつの間にかアリス自身もその夢を気にかけることはなくなっていたが、最近は夢の中だけでなく、ふとした拍子にあの声が聞こえてくるのだ。
(一回、病院に行ったほうがいいのかな・・・・)
その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「アリス!そろそろ起きなさい。もう朝ごはんが出来てるわよ!」
母親のリサがアリスを起こしに来たようだ。
アリスはもう少し寝ていたかったが、仕方なく返事をした。
「今行くわ。ママ」
「なるべく早くね。トーストが冷めちゃうから」
そう言うとリサはドアの前から離れた。
スリッパの音でリサが階段をおりたことを確認したアリスは、小さくため息をついた。
母親のリサは、アリスを女の子らしく育てようと躍起になっていた。
一方、アリスは普段から男の子と遊ぶことが多く、人形やぬいぐるみで遊ぶのはあまり好きではなかった。
しかし、当然リサはアリスのそんな行動をよく思っていなかったし、アリスが8歳になる頃には男の子達と外で自転車のレースをすることを禁止されてしまった。
それ以来、なんとなくアリスはリサに心の中で距離を置くようになった。
おとなしく言う事を聞いていても、心の中では別なことを考えていたし、部屋で勉強しろと言われればこっそり抜け出して外で遊んでいた。
もちろん、アリスが着る洋服もすべてリサが選んでいた。
クローゼットに何着も並べられたワンピースやドレス。
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