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その瞬間、アリスは絶望的な気持ちになった。
アリスはベンおじさんが大の苦手だったからだ。
セイウチのような体をしていて、ふさふさの顎ひげをたくわえているおじさんは、アリスが誕生日を迎えるたびにテディベアをプレゼントするのだ。
まるで、アリスが喜ぶと思っているかのように。
アリスにとってはテディベアなんかよりも野球カードの方が魅力的だった。
「ほら、できたわよ」
気がつくと、アリスのブロンドはリサの手によってカールされ、高い位置でポニーテールにされていた。
よかった、とアリスは思った。
今日は幾分マシな方だ。
リサがアリスの髪型をセットするときは、必ずと言っていいほどリボンやヘアピンが大量に付いていたのだった。
今日はリボンがひとつだけなので普段と比べると(全然そんなことはないのだが)少し地味に見えた。
「ありがとう、ママ。素敵な髪型ね」
アリスは再び思ってもいないことを口にした。
だがリサはいつもながらにそれに気づかず、アリスの言葉に笑みをこぼしていた。
「とっても似合ってるわ!それじゃ、朝ごはんを食べて部屋の掃除でもしてなさい」
「うん」
そのあと、アリスはできるだけ服を汚さないように朝食を食べ、2階にある自分の部屋に上がっていった。
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