第一章

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アリスは自分の部屋に入ると、大きなため息をつきながらベッドに腰掛けた。 メルヘンな天蓋付きのベッドが、軽く軋む。 (掃除する所は特にないんだけどな・・・) アリスは部屋をぐるりと見渡した。 リサの言いつけで、部屋はいつも綺麗にしてあるのだ。 ふと、アリスの目はクローゼットに止まった。 ベッドから立ち上がると、クローゼットを開ける。 一見、そこには可愛らしい洋服が並んでいるかのように見えるが、実は違う。 (よいしょ・・・と) 洋服をかき分け、クローゼットの奥に手を伸ばすと、やや大きめの箱に触れた。 「あった・・・」 アリスは小さく呟くと、箱を開けた。 箱には、アリスがこっそり自分のおこづかいで買ったジーンズやバイクの雑誌、ロックバンドのポスターなどが入っていた。 この箱の中身を見ている時だけ、アリスは本当の自分でいられるような気がするのだ。 しばらく箱の中を眺めていると、突然チャイムが鳴った。 「アリス!おじさんが来たわよ!」 リサが階段の下からアリスを呼んでいるようだ。 急に現実に引き戻されたアリスは、再び大きなため息をついて玄関に向かうのだった。
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