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「そうね。ウチの繊細な技術は一番にアピールしたいところだけど。
でも展示会ってのは、まずはブースの前で足を止めて寄ってもらわなきゃ意味がないのよ。
手に取ってもらってやっと分かる技術の紹介は、寄ってくれたその次の段階。
遠目からでも金属部品加工の会社だって分かる看板代わりの大きなボルトでインパクトを出して、繊細な技術も持ち合わせてるっていうギャップで印象付けるの。
もし無ければ展示会用に作ってもいいんじゃない?」
「受注品じゃないのに許可下りるかなぁ」
「新規顧客の獲得に繋がるなら安いもんよ。何なら私から掛け合ってもいいわ」
製造部に所属しながら設計も担える彼女の断言ほど心強いものはない。
「ありがとう凜子。でもまずは私が課長に談判してみるよ」
奈都が満面の笑みで揚々と椅子から立つ。
凜子も微笑み返したところで、はっと弾かれたように両手を合わせ叩いた。
「そうだった!私これを伝えに来たのよ!
来月、製造も設計も営業も全員集合でバーベキューやろうって企画が出てるらしいんだけど」
告がれるや否や、発とうとした奈都の瞳に星が生まれる。
「はいはいっ、幹事やる!私!」
「うん、立候補してくれると思った」
頷く凛子は奈都の挙手を見抜いていたようだ。
「去年も引き受けてくれてたものね。
飲み会よりよっぽど手間のかかるバーベキュー会の幹事なんて、アンタ以外は頼まれでもしない限り誰もやりたがらないだろうから即決定だわ」
「場所とか日時は決まってるの?」
「それはこれから。多分幹事にお任せじゃない?
ちなみに男子側はもう決まってるわよ」
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