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会場は決して山奥の僻地などではない。
車で十五分も走ればスーパーが見つかる比較的開けた所で、買い物時間込みの往復で一時間は潰れても許される範囲だ。
肉無しバーベキューをするよりかは、一時間は待っても肉があった方がよっぽどいい。
だがそこで買いに行く手段を取らなかった賀集は、動揺のあまり周囲に役割を振るのを忘れて一人火おこしに専念する始末。
結果、見かねた凜子が車を出して買い出しに赴き、肉無しバーベキューの強行は免れたが。
賀集の振るわれなかった采配は、『現場以外では使えないリーダー』の烙印に直結してしまったのだ。
そしてこれは凜子だけが知る事実だが、彼がバーベキュー会の幹事を負ったのは本人の自薦によるものだ。
奈都の前では『頼まれちゃって』などと惚けていたらしいが、幹事役を機に奈都に接近したいもくろみが透けて見えていただけに凜子の呆れはひとしおである。
「賀集はもともと料理が苦手だから、きっとパニックになっちゃってたんだよ」
さすがに『あんなの』や『見かけ倒し』呼ばわりは可哀相だと、賀集の内情を知らぬ奈都がフォローすると。
「とにかく、今年は馬場(ばば)主任よ」
挙がったのは決定済みの男子側の名。
「…えーと、確か先月名古屋支社から移動してきた…?」
正解、の声と共に凜子の人差し指が天を指した。
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