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馬場の容姿は、世間ではかなりの率でイケメンのカテゴリに分類されるだろう。
長身で細身、少々ネコ毛気味な栗色の短髪は、奈都の髪質と似ているかもしれない。
半田の工場にはかつてはいなかったタイプの男性だ。
加えてリーダーシップと気配り上手な面を持ち合わせているとあらば、社内の女性陣が騒ぐのも無理はない。
「誰かさんみたく勢いと口先だけじゃないかどうか、采配をお手並み拝見しましょうかねー」
口調は揚々と、まるでドラマや映画の展開を楽しむかのように述べた凜子が去る。
残された奈都は二人の背中を眺め、やがて女性社員が集まる輪に合流したのだった。
***
バーベキュー大会に参加した社員数は30弱。
それを男女混合で半分に分け、それぞれに幹事が一人ずつ配置される。
二つの班を行ったり来たりするのは基本自由だが、食材の減りが偏らないよう(特に大柄の男性がいるグループは消費が早い)所属する班の網の上のものを食べるのがルールだ。
従って調理の支度は、自然と各自が所属する班に分かれ行われていたのだが。
自分の班の支度はそこそこに、もう片方の班の様子が気になって仕方がないのは賀集である。
「賀集、皮そんなに剥かなくていいわよ。明らかに食べるとこ減ってる」
同じ班の凜子が指摘すると、隣の班からきゃあっと黄色い悲鳴が上がった。
「うるせぇな」
「は!?今何て言ったアンタ」
ツルツルの玉ねぎを握って呟いた賀集に凜子が噛み付いた。
「…あ、いや羽野じゃなくてあっち」
空いている片手で指した方向には、馬場と少し離れての奈都の姿。
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