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ボルトとナット。
どちらも径が合わなければ、無理矢理はめ込んだものでは部品に傷や歪みが生じるし、緩いものでは組み立てもままならない。
ぴたりと一致するもの同士のみが対になり、使用の継続を許される。
それは、恋愛においても同じではなかろうか。
性格、価値観、趣味、体の相性―――。
着目するポイントは人それぞれだが、どの点においても自分と合う人でなければやがて擦れ違って傷付いたり、スタートを切る事すらままならない場合もあるだろう。
例えば自分がナットなら、明るい未来を見せてくれるのはぴたりと径が適合するボルト。
無理矢理ではなく、定められたように息が合う人はきっといる。
ボルトを『雄ねじ』、ナットを『雌ねじ』と呼ぶのもあながち無関係ではないのだ。
かつてそういった持論を展開した事があるのは、西浦奈都(にしうら なつ)、25歳。
しかしその思想に準じて邁進しているかといえばそうではなく、仕事ばかり自ら好んで没頭する日々。
ボルトの彼が登場するその日は、彼女の頭の片隅にただぼんやりと描かれているだけだった。
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