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「リベンジよ賀集」
俯いて黙々と玉ねぎの皮をひんむく賀集に、凛子の真っ直ぐな声が降った。
「汚名返上。名誉挽回。ピンチはチャンス。今こそその時」
「何で羽野はいつも分かった風に…」
「『分かった風』じゃないの。『分かってる』のよ私」
フラットな声音は自信の表れか。
相変わらずクールな凛子の言動には、女子とはいえ奈都と付き合ってきた年数や密度の差を見せつけられているようで嫉妬すら覚える。
(イライラしてばっかだな俺…)
「前も同じような事言ってたな。羽野は西浦の何を知ってるんだ?」
「……」
珍しく沈黙する凛子に、賀集の胸に不安と微かな苛立ちが走る。
このテの話題になるといつもそうだ。
貴方は知らなくていい事だと言わんばかりに、即座に話題を打ち切られる。
どうせ今回も蚊帳の外に追い出す通例どおりじゃないのか。
「そうね、賀集が真剣に奈都と向かい合って奈都に全てを伝えられたら話してもいいわ」
「それは“告白”って意味か」
ええ、と凛子が頷く。
「告白したらきっと賀集は悩むんじゃないかしら。奈都の本心を知って、判断に苦しむ羽目になると思う」
「何だよそれ…」
告白したら確実にハッピーな未来が待ち受けていると傲っているつもりはないが、凛子の予言者のような発言には納得がいかない。
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