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「頑張ってね」
やはり打ち切ったような言葉で返される。
ぜってー本心で応援してねーだろ。
そう内心で歯向かう賀集の横で凛子が立ち上がった。
「そろそろウチも火おこし始めないと。炭取ってくるわ。その玉ねぎ輪切りにしておいてちょうだいね」
「ちょっ、おい、羽野…!」
一人残され、まずは輪切りの解釈に悩み、続いてどれくらいの厚さで切るべきか盛大に悩む料理オンチな賀集であった。
焼き始めて早々に、肉が足りなくなったと切実なコールが上がった。
奈都のグループからだ。
大食いな社員がいる訳ではないのに(むしろ馬場の前で可愛く小食を演じる女性社員が多いくらいだ)それでも不足の原因は、単純に量x頭数の見積りを間違えたかららしい。
「僕が買ってくるよ。すぐそこの売場でいいよね。色々な肉売ってるみたいだから適当にチョイスしてくる」
誰よりも率先して名乗り出たのは馬場。
「あ、主任」
追い掛けるように奈都も席を立った。
「会費の残りがあるんで使ってほしくて。私の車から手提げ金庫取ってくるんで、少し待っててもらっていいですか」
「あぁ、それなら一緒に駐車場まで行くよ」
どうせ同じ方向だしね、と添えた馬場の言う通り、売店の奥側がバーベキュー使用者専用駐車場となっている。
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