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売店に行く前に寄った駐車場は周囲に雑草が生い茂り、駐車スペースの目印が縄で引かれている程度で、空き地と呼ぶ方が相応しかった。
奈都が自分の車のトランクから、手提げ金庫に保管された封筒を取り出した。
チョコレート色のラパンは、名称と美味しそうな内装に惹かれた彼女のチョイスだ。
「これで会費残り全部です。多分足りると思います」
「ありがとう。でも、車内にお金を置いておくのはちょっと危険じゃないかな。皆から徴収したものなんだし何かあったら…」
「…っ、すみません!!」
奈都が大慌てで腰を折る。
「主任の立場を考えず、危うく泥を塗ってしまうところでした。申し訳ありません」
事が起きれば、幹事としての立場だけでなく主任としての責任も追及されかねない。
自分のせいで支社から赴任したばかりの上司をそんな目に遭わせては――。
「顔を上げて」と落ち着いた声色が頭上に降る。
「もちろん責任云々も関係なくはないけど…仮に事件が起こったとしたら、外部の犯行なら外部を、内部ならここにいる誰かを疑わなきゃいけなくなるでしょ。せっかく皆と交流出来るバーベキューに来たのに、それを悲しい思い出にはしたくないじゃない。だから防げる事は防ごうよって話で、責め立ててる訳じゃないから」
「――――…」
「西浦さん…?」
「以後、改めます」
ハッと我に返ったかのように肩が跳ね、馬場の前には再度封筒が差し出された。
「それと、もう一つ、きいてほしい事があるんだけど…」
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