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間に降り落ちる沈黙。
居心地が悪い。
告白をされているにもかかわらず、早くこの話題から逃れたいと願う自分自身への嫌悪も抱かれる。
「……ふっ」
(ふ?)
「別に、いいんじゃない」
「?!」
予想外の返事に怪訝な表情になってしまったと自覚する。
今、この人は肯定したのだろうか。
奈都が見れば、馬場はその長身の腰を折り曲げ拳を口元に添え破顔している。
面白い事を言ったつもりでは――奈都の顔付きがより訝しげになる。
「そんな一世一代の告白みたいな神妙な顔して、どんな“ゴメンナサイ”を言うのかと思ったら…」
「あの…?」
「『昔から大好き』なんだね。なるほど、西浦さんの仕事はまさに天職ってわけだ」
半ば奈都を置いてけぼりに、馬場はひとりウンウンと頷く。
「好きなものがあるのは素敵な事だよ。
それが西浦さんの魅力を形成してるものの一つなら僕はそれを否定するつもりはないし、むしろどんどん磨けばいいと思ってる。
西浦さんが今までどんな男と付き合ってきたのかは知らないけど、好きな人の好きなものを拒むって事はイコールその人自身を拒否する事だと僕は思ってるから。その点の心配なら無用だから安心して」
「……」
「はは、『金属マニア』ね、気に入った。ますます付き合って欲しくなったよ」
よろしくね。西浦さん。
奈都の返答を待たずしてそう述べた馬場は、未だ封筒を握り締めたままの彼女の手を両手で包み込み、柔和な笑みを浮かべたのであった。
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