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何かを察知したように凛子が早口で締める。
――と。
「今日は二人とも弁当かぁ。同じ弁当でもコンビニのは飽きちゃう不思議って何なんだろうな」
そう言って割って入った賀集の手には、牛丼チェーン店のロゴ入りビニール袋がぶら下がっている。
「ん?」
普段なら即刻で同意を得られるか突っ込みを入れてもらうところだが、暫し空いた間に賀集は思わず首を傾げた。
「何かあった?」
「特に。翌日のお弁当前提で夕食の献立を考える派か、夕食は好きな物でお弁当には回さない派かどっちっていう話」
返した凛子に、そのテの話題に入れない料理音痴な賀集は「あぁ」と頷くほかない。
そうして頷きながらお持ち帰り牛丼の蓋を開けるが。
「……」
ある程度賀集の中で予想していただけに、反応の無さに肩透かしを食らったような気分になる。
いつもはここで「美味しそう」だの「ちょっと交換しようよ」だのと来るはずだ。
チェーン店だろうが手作りだろうが無関係に、食全般に対し興味が広い奈都の反応としては違和感を覚えずにいられない。
しかも迷い箸と言うよりも意識は弁当に向けられておらず、どこを見ているのか定かでない虚ろな視線――。
「…西浦、具合悪いのか?」
訝しげに覗き込まれた表情に、奈都の体が後退気味となった。
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