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それは高校一年生も終わりかけ。
工業高校の奈都が二年生の男子から告白された日は、それから遡ること半月前になる。
同じ機械科の先輩からだった。
しかし相手はプログラミングが中心の制御コース、こちらは金属等のものづくりが中心の製作コース。
直接会話をする機会は皆無と言って等しく、告白されて初めて意識したぐらいの認識だった。
どこで自分の存在を知ったのだろうと不思議に思ったが、全校生徒の男女比でいえば圧倒的に女子の比率が少ない。(おおよそ男子の十分の一だ)
特別目立つ行動をしていなくても、意図せず相手の印象に残ってしまったらしい。
それが生まれて初めてされた告白で、初めての彼氏だった。
告白にOKの返事を出したのは、彼のその時の言葉に信頼を置けたからに他ならない。
『授業に夢中になってる姿がいいなって思って』
――自分を受け入れてくれた。
ありのままの私を好いてくれたんだ――。
当時は工業高校に進学する女子は稀で、その道を選んだ奈都は周囲に物珍しがられる事が多々あった。
まるで珍獣扱いされているような、ともすればアイデンティティーを否定されたような感覚が続く中、告白の言葉は暗闇に射し込んだ光のようだった。
先輩は本当の自分を肯定してくれたのだ。
そう出した自らの答えを信じ、交際の承諾を相手に伝えた。
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