3)鉛に沈めた恋と過去

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思春期男子の特有のような陽気な口調に嫌悪が走った。 友達相手ですら自分の恋愛を打ち明けた事がなかった奈都には、理解し難い質問だ。 恋愛を語れるほど心を許せる同性がいなかった、という方が適切かもしれない。 ――まさか先輩は、私との進展具合を赤裸々に話してしまうんだろうか。 事がまだにしても済んでいても、性事情というプライベートを他人に晒すなんて。 もっとも、高校生男子同士なら当然の話題なのかもしれないけれど。 だとしてもやっぱり嫌だという感情を抑えながら息を潜めていると、ややあって彼が口を開いた。 しかしそれまで聞いた事のない、鼻にかかったような声の砕けた調子だった。 『まだだっての。でもま、OKは近いんじゃね? どうせ向こうはモテたくてわざわざ男子ばっかの学校選んだんだろうし、体の許可も早いっしょ』 彼の発言に間髪入れず、周囲からゲラゲラと笑い声が上がった。 『あー逆ハーレムってやつな』 『うわ、マジかよ。毎日ぼっちで度胸あんなって思ってたら姫ポジション狙いだったんか』 『てか実はもう二股かけられてたりして?』 『二つで済んでりゃいいけど』 手を叩いての罵りを彼は否定せず、それどころか同調するように『バーカ』とせせら笑う。 『……っ』 心臓が痛い。苦しい。息が出来ない。 どうしてこんな……。
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