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会話の内容がすぐに飲み込めなかったのは、自ら思考回路を遮断させてしまったからかもしれない。
飲み込むと目の前が暗転し、視界がぐらりと揺れたようだった。
突き刺さった言葉は、引き抜いては再び刺し奥までえぐるかのように脳内で何度も再生され、その痛みに息の仕方さえ忘れてしまいそうになる。
“どうせモテたくてわざわざ男子ばっかの学校選んだんだろうし”
違う。そんなんじゃない。
昔からもの作りが好きだった。
家の近くの製鉄所や町工場。大きな塊から生まれ変わる金属。汗水垂らして働く人々。
幼少期からその光景を見続けて育ち、いつか自分ももの作りの世界に携わりたいと未来を見据えた上での選択だった。
今まで度々受けた、工業高校進学に対する周囲からの奇異そうな視線が蘇る。
“女の子なのに“
”わざわざそんな道選ばなくても“
その度に自分の過ちを咎められている感覚に陥った。
先輩はそんな自分が選んだ道を、間違いじゃない、自信を持っていいんだと認めてくれたのだと思っていた。
だけど、全てはこちらの思い込みだった――。
鼻の奥にツンとした痛みが走る。
否定しに行けるほど、彼に食ってかかる度胸などない。
奈都はよろけそうになる体を起こし、その場から逃れるように階段を下った。
壁伝いにフラフラと歩みを進める。
廊下の角を曲がったところで――ドン、と体に何かがぶつかり、その衝撃で奈都はようやく我に返った。
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