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視線を逸らし呟かれる。
頬はほんのりと紅をさしている。
「ダメだよ、他人任せにしてちゃ。毎日ご飯作りに来てくれるとか、カノジョが出来たとしても稀なパターンなんだから。
それにいい加減自炊くらいはやれるようにならないと。イマドキ男子は料理も必須条件だよ?」
奈都が偉ぶって腕組みをすると、賀集の眼差しが真っ直ぐ彼女を向いた。
先程まで泳いでいた目は今はしっかりと奈都を捉えている。
「? 何」
「西浦、料理得意だよな…?」
「うん。食べるのも作るのも両方得意だけど」
「…っ、だったらさ、良かったらその、俺に―――」
「お二人さん。イチャついてないでとっとと食べ始めたら?休憩時間減るわよ」
割って現れたのは、奈都や賀集、その他食堂にいるほぼ全員と同じ作業服姿の女性。
手には本日のランチをのせたトレイ。
奈都の天然パーマのかかったボーイッシュなショートカットとは対照的に、ストレートの長い髪はシュシュで一つにくくられている。
「違うよ凛子(りんこ)。私達単なる友達同士の普通の会話してただけだよ?」
「冗談だわ!真面目に返すなっ」
アンタが真面目になればなるほど、サクッと心えぐられる奴がいたりするんだから。
凛子と呼ばれた彼女は付け足しながら奈都の横に腰掛ける。
奈都の頭上にはクエスチョンマークが浮かび、対する賀集は押し黙って顔面を凍らせた。
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