3)鉛に沈めた恋と過去

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過去に決着をつければ、馬場への返答も自ずと見つかるだろうか。 「自分の気持ちが見えるまで、まずは試用期間を設けて付き合ってみるっていう手もあるけど」 凛子が言うと、奈都の顔に難色が浮かぶ。 「って、アンタお試しとか器用にこなせるタイプじゃなかったわね」 「うん…何かこういうのって、心構えがきちんと持ててからじゃないとなって思う。 中途半端な気持ちで付き合って、期待持たせといて、やっぱりごめんなさいっていうのは相手に失礼な気がして…」 「ならそれが答えよ。今の言葉、そっくりそのまま主任に伝えればいいと思うわ」 言い切った凛子に奈都が頷いた。 「ここって色々コースあるのね」 話が一区切りついたと見たのか、凛子がファイル状のメニューを開いた。 末頁には女子会や各種宴会といった名目で、リーズナブルなコースメニューが並んでいる。 「食べ放題でもオーダー形式ってところがいいわね」 「出来立てが一番だよね。 あ、ねぇ、今度は賀集も連れて来ようよ。ここのどれも美味しいから絶対気に入ると思うし。私も大食いだけど、賀集も負けず劣らずで食べる方だから、載ってるの制覇出来ちゃうと思うんだよね」 「――…」 「どうしたの凛子」 「ううん。何でも」 凛子が微笑んで、ようやく動き始めた奈都の箸。
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