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こんだけしょっちゅう名前が上がるくらいの存在感だってのに。
いい加減早くその想い気付かせないと、主任にとられたって知らないわよ――。
凛子がそう内心で送った警告を、賀集が察知し奈都に好意を伝えるのはいつになる事だろう。
実際に本人に警告すべきか、否か。
迷うところだが、お節介の度が過ぎては当人達のペースを崩しかねないと凛子は思う。
ましてやあの奈都の事だ。
賀集から告白されれば途端に意識して、賀集から逃げる可能性がある。
ただでさえ馬場からの告白で冷静さを欠いているというのに、これ以上難題が降ってはキャパを越えてパンクしてしまうかもしれない。
当人には当人のペースがある。
早ければ良い訳ではないのだし、余計なお節介を働いて関係を壊してしまうよりも温かく見守ろう。
そんな思いもするが。
間が悪く、要領もお世辞にもいいとは言えない不器用な賀集の事を思うと――。
「…いっそアンタもあいつを好きになっちゃえばいいのよ」
「?何か言った?」
「んーん、なーんにも」
こっそりごちて、再び美しい微笑みを奈都に返す。
そして「勿論友人としてでなく恋愛感情としてね」と内心で付け足した。
ちっとも進展しない友人達の恋愛模様。
それに対するもどかしさと、馬場参戦の期待感を流し込むように、届いたウーロンハイを一気にあおる凜子であった。
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