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嘆息する彼女の向かいで、固まっていた賀集の表情が溶解した。
凛子は呆れた溜め息、賀集はどこかホッとしているような安堵の息と対照的だ。
「奈都…本当にアンタ、意識してオタク封印しないと毎回合コンで失敗するはめになるわよ?
この間もボルトとナットの関係性を語って引かれてたらしいし」
「…別に。変な空気にしちゃったのは申し訳なかったけど、合コンで彼氏作ろうって本気で思ってないし…。
出向いたのは設計部の子に『どうしてもお願い』って頼まれたからで、頭数合わせるのと」
「食事が目当て?」
賀集が被せると、途端に奈都の目が輝いた。
「そうっ、そうなの!聞いて聞いてっ。
そこの店のエビマヨめちゃくちゃ美味しくてさ!他にもごま団子とか小龍包とか点心も揃ってて全部美味しかったんだよ!だからまた行きたいなーって。今度皆で食べに行こうよ、ねっ」
純真無垢と言わんばかりの眼差しと口調は、食事ネタになれば毎度の事。
彩りも味も良いお弁当を毎日自分で作り、且つたまの外食は各店のメニューをとことん味わい楽しむ奈都は、食全般に関しての好奇心や探究心が非常に高い。
「え、俺も含まれてるの?」
「何言ってんの、あったりまえでしょー。
こういうのって気の合う友達と一緒に行って、たくさんのメニュー頼んで交換し合って食べるのが楽しいんだから」
「あぁうん。『友達』と行くのがいいよね。一人よりもね、うん」
自分に言い聞かせるように頷く賀集。
「うわ、またサクッとえぐったよこのコ」という凜子の小さな呟きは奈都には届いていない。
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