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「さっきの俺と西浦の会話、羽野がわざと遮った気がするんだけど」
「あー、とうとう一世一代の告白に挑もうとしてたよね?」
「してねぇよ!!」
上げた声は端無く大きく上擦った。
「料理得意なら教えてくれ、って頼もうとしたんだよ。なのに羽野が割り込んできたから、後になったらもう言いづらくなって…」
「ならやっぱり遮って正解だわ」
何でだよ。賀集が露骨に訝しむ。
「全く、賀集ってオンナゴコロどころか奈都の気持ちすら全然分かってないわね」
「どういう意味…」
期待と不安半々で尋ねると、ランチの最後の一口を終えた凛子が人差し指を立て賀集を見据えた。
「いい?料理を教えてもらうって事は、まさか一緒に料理教室に通う訳じゃないわよね。相手の家に行く、もしくは自宅に招くって事でしょ」
「だからそれを機に近付けるかなって」
「馬鹿ね」
呆れた風に返されて、賀集の気が少々ささくれ立つ。
25歳青年男子を馬鹿呼ばわりとか。まぁ西浦になら言われてもいいけど。お、いいな、そのシチュエーション…じゃなくて。
「何でそれが駄目なんだよ。無理矢理ホテルに誘うでもなし、むしろ健全な手法だろ」
「密室には変わりないわ。しかも鍵掛けられでもしたら、かえってホテルより危ないじゃない。
いくら恋愛偏差値低くても、男女二人きりの密室っていう危険な状況になる事くらい奈都にだって予測出来るわよ」
「…う…」
「危うく公衆の面前で玉砕するところを未然に防いであげたんだから、賀集には恨まれるどころか感謝してもらわないとね」
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