純心サイクル -3-

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正義部、と名乗り登場した彼女にバドルは嫌悪感を覚えた。 『正義』という言葉は軽くないことを、彼はクロノ・トリガーとして任務を行う上で知っている。 世界のために戦っていても恨まれることも、妬まれることも、非難されることも多くある。 決して綺麗ではないもの――それが正義だということをバドルは知っているのだ。 だから、簡単にそのような表現を、しかも、部として扱う彼女に嫌悪したのだ。 しかし、戦ったからこそ解る。 彼女が何の考えもなく、ふざけて正義という言葉を扱っていないことを。 それに見合うだけの力を彼女が持っていることを。 「そうだな。簡単に言い表せはしない。正義という言葉も、私の戦う意味も、生きる道も」 強く、はっきりとした言葉が聞こえる。 揺らぎのない口調であった。 「生きる道、か」 「あぁ、生きる道だ。長く、先の見えない恐ろしい道だ。不安になることもある、揺らぐこともあるだろう」 「それでも進むのか? 戦うのか?」 「……私のことを正義だと言った男がいる。私のことを全て理解し、受け止め、笑わず、それでも私のことを正義だと言ってくれた男がいるのだ」 その言葉を聞きながら、バドルは玲央の目を見た。 そこに感じた二つの覚えのある色。これは―― 「その言葉に救われた。私は――自分の人生を意志を持って完遂するまで歩むことを、戦うことを決して止めない!!」 その言葉を聞いた時に、バドルは彼女の『強さ』を本質的に理解した気がした。 ――あぁ、この目はスキアと、きっと僕と同じ色をしている。 そう思うと、口元が綻びそうになった。だが、彼は歯を食い縛り、それを消す。 「そうか――。僕も止めるわけにはいかない!!」 距離は解った。 そして、バドルは魔法を――いや、それは魔法という表現は適さなかった。 右手を振り上げ、籠めた魔力を暴発させ相手へと叩き込む。 基本を無視した、がむしゃらな魔法だった。 彼の特質からなのか、無意識なのかは定かではないが、それは強い光を放ちながら玲央へと放たれた。
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