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強い光は暴発した魔力が残す煙へと吸収された。
そして、全てを出し終えたバドルは振り下ろした右腕をだらりと下げながら佇む。
彼は全てを理解していた。
「素晴らしい」
玲央の声が聞こえた。
バドルは顔を上げ、彼女を見据える。自分の攻撃を受けた相手は血を流していた。
玲央は頭から、口から血を流し、それでもしっかりと立っていた。バドルを見つめていた。
彼女はバドルの一撃を耐えたのではない。受け止めたのだ。
避けることも可能な彼女に対し、手応えのあったバドルはそのことを、その意味を理解した。
――全く……強い人だ。
敗北を悟りながらもバドルは相手へと相対する。
そして、
「君はその意志を持って、いつまで歩くことが出来る? 戦うことが出来る?」
彼は尋ねた。
玲央は少し笑いながら答える。
「君と同じ――死ぬまでだ」
バドルの攻撃で目は眩んでいただろう。
だが、それでも彼女の目は真っ直ぐに相手を見据え、そして拳を強く、固く握り――バドルの顔面へと全力で振りぬいた。
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