純心サイクル -3-

14/14
前へ
/335ページ
次へ
その攻撃を放った直後、玲央は驚いた。 バドルが倒れなかったからである。 意識があるようには思えなかった。しかし、 ――っ!! 玲央は次の攻撃態勢に入った。 理由はバドルの右手が微かに動いたからである。 もう攻撃も何も出来ないだろうが、それでも、彼は戦うことを止めない。その強さがあることを彼女は知っている。 もう片方の拳を強く握った時だった――彼女はその拳を緩め、腕を下げた。 バドルが反撃してくることはなかったが、その周囲にいるクレイドル、カルム、火燐が臨戦態勢に入っていたのだ。 玲央が攻撃を放つならば、命を賭してでも彼等は向かって来ていただろう。 「もう終わっていただけないでしょうか」 「こちらの負けでいい」 「バドルをそれ以上傷つけるなら、許さないよ」 クレイドル、カルム、火燐が決意に満ちた目を玲央に向けながら話す。 玲央はそれを受け止め、小さく笑う。 「あぁ、もう戦わない。終わりだ」 そう言った時、どさり、とバドルが仰向けに倒れた。 そんな彼を一瞥し、玲央は再びクレイドル達に視線を向ける。 そして、 「彼が目を覚ましたら伝えておいてくれ」 彼女の言葉が響く。 「君の歩く姿を見守り、理解し、共に戦ってくれる者達に、君は大切に思われている。このことを彼は知っておくべきだ。それだけでもっと強くなれる」 そう言って彼女は笑う。 それに返すようにクレイドルは小さく笑い、 「そんなこと、恥かしくて言えませんよ」 彼はその言葉を添えた。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加