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その攻撃を放った直後、玲央は驚いた。
バドルが倒れなかったからである。
意識があるようには思えなかった。しかし、
――っ!!
玲央は次の攻撃態勢に入った。
理由はバドルの右手が微かに動いたからである。
もう攻撃も何も出来ないだろうが、それでも、彼は戦うことを止めない。その強さがあることを彼女は知っている。
もう片方の拳を強く握った時だった――彼女はその拳を緩め、腕を下げた。
バドルが反撃してくることはなかったが、その周囲にいるクレイドル、カルム、火燐が臨戦態勢に入っていたのだ。
玲央が攻撃を放つならば、命を賭してでも彼等は向かって来ていただろう。
「もう終わっていただけないでしょうか」
「こちらの負けでいい」
「バドルをそれ以上傷つけるなら、許さないよ」
クレイドル、カルム、火燐が決意に満ちた目を玲央に向けながら話す。
玲央はそれを受け止め、小さく笑う。
「あぁ、もう戦わない。終わりだ」
そう言った時、どさり、とバドルが仰向けに倒れた。
そんな彼を一瞥し、玲央は再びクレイドル達に視線を向ける。
そして、
「彼が目を覚ましたら伝えておいてくれ」
彼女の言葉が響く。
「君の歩く姿を見守り、理解し、共に戦ってくれる者達に、君は大切に思われている。このことを彼は知っておくべきだ。それだけでもっと強くなれる」
そう言って彼女は笑う。
それに返すようにクレイドルは小さく笑い、
「そんなこと、恥かしくて言えませんよ」
彼はその言葉を添えた。
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