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「……ん」
薄っすらと開いた瞼に、人工的な光が差し込む。ぼやけた視界に映る天井は、見覚えのある場所だと彼に教えてくれた。だが、そこは自分の部屋でないことが少しだけ残念でもある。
どれくらい気を失っていただろう、レミーは身体を起こそうと試みた。
しかし、
「……くっ」
全身の痛み、そして自由の利かない身体が未だ回復していないことを伝える。
彼は立ち上がることも出来ず、その場を転がった。
「そりゃ立つことは出来ないと思うんだけど」
聞き覚えがあり、出来れば聞きたくない声だった。
レミーは地面に転がったまま、視線だけで彼――鳴髪を睨んだ。
「そんな眼を向けて欲しくないんだけど。こっちは戦う気はないし――」
そう言った彼は右肩を左手で押さえていた。
おびただしい量の血が流れ、腕を伝い、指先にて血溜まりを作っている。
そこは記憶に確かなら、レミーが撃ち抜いた場所だ。
「戦えないんだけど」
そう言って、彼は笑う。
その彼と同じ目線になろうと、レミーは身を起こそうと何度も試みたが上手くはいかない。
理由は解っていた。自身で放つと決めた最後の攻撃――それが生み出した代償といってもいい両腕。
しっかりと見る勇気はないが、全くもって感覚はなかった。
「その腕……応急処置は必要と思うけど」
「……そうしたいのは、俺が一番思っている」
「確かに。協力してもいいんだけど?」
「……電気ショックで強制的に動かすのか?」
「馬鹿にしてるとしか思えないんだけど。おい、傘!!」
鳴神は、レミーの視線が届かない方へと声をかけた。
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