JUNGLES -1-

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横に払われた斬撃は相手を捉えていた。 しかし―― 「――!!」 突如現れたのは石の壁だった。 クレイドルが無詠唱で出現させた防御手段だということは明らかである。 だが、 ――構うものか さすがに何も無く一撃を与えられるとは、ケイトも思ってはいない。 彼は持ち手を力強く握り締めた。 そして、力一杯に振り抜いた一撃は石の壁を砕く。 舞う粉塵と乾いた土の匂いが広がった。 少しだけ霞んだ視界に、人影が見える。このことを予期して間合いを取ったクレイドルだろう。 ケイトは再び太刀を握りなおす――つもりだった。 「なっ!!」 今までに持っていた太刀が、まるで別物のように急激に重さを変えた。 刀身の切っ先が地面に落ちると、ケイトは自分の持っていた太刀を見て驚く。 先程砕いた石が纏わり付いているのだ。 予想外の重さは、彼の追撃を中断させた。 「気にすることはありません」 気が付けば粉塵は晴れていた。 そこにはクレイドルがいて、変わらぬ笑みを見せている。 対するケイトは歯を食い縛り、焦りの感情を含みながら睨む。 再び真逆の表情の二人が、そこにはいた。 そして、クレイドルは優しく言ったのだった。 「君の実力は低くは無い。だが、上には上がいるものです」 クレイドルが右手をケイトの方向に突き出すと、彼の背後に浮かんでいた無数の石柱が標的へと襲いかかった。 「がっ!!」 まずは一撃は腹部を襲った。 衝撃は背中を貫くように響き、その強烈さまでをケイトは覚えていた。 後は、次々と石柱は彼へと襲い掛かり、全身に突き刺さる。 何度も、何度も。繰り返し、繰り返し。 砕けた石柱は岩となり、ケイトを襲う。 岩は砕け石となり、何度も襲う。 最後には砂煙となり、ケイトに降り注いだ。 まるで、彼を寝かしつける為に時を刻む砂時計のように落ちる砂は、綺麗で室内灯の光を乱反射させ輝く。 しかし、その光景をケイトが見ることは無い。 彼は既に意識を失っていた。
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