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史也に気を遣って慰めてみた沙乃の親友である【三嶋 真美(みしま まみ)】の言葉は逆効果だったらしく、史也に鋭いツッコミを受けた。 「って言うか聖月は《イケメン》つか《美少年》じゃね?」 「よく言った《サル顔》!!」 イケメンを美少年に訂正する森信に沙乃は褒めているのか貶しているのか分からない言葉を大声で吐き出した。 「褒めてねぇよ!この補習予備軍!!」 ーーーーーーー この5人は今年の4月5日に《私立春日神沢学園》の中等部から高等部に進級する。 小学校の頃からずっと一緒にいる大切な親友達だ。 まだ、風が少しだけ冷たい春の昼、聖月の案で沙乃達は長元家にお邪魔する事になった。 「お邪魔しまーす」 「あれ?明奈は??」 「上じゃね?」 長元家は煉瓦素材のカントリー調の二階建ての一軒家の作りだ。 今、家には両親が旅行に出掛けていて史也の義姉で聖月の実姉の【長元 明奈(ながもと あきな)】と彼氏の【松岡 陽介(まつおか ようすけ)】がいるはずなのだが······· 「自分の部屋だよきっと」 聖月がそう言うと沙乃は二階に上がり突き当たり右にある部屋に入った。 「あーきなっ!!」 「················」 「··························」 「········ごめん········」 ーーパタンーー 明奈の部屋を開けた沙乃は一言謝り静かに扉を閉めた。 階段を降りる最中に明奈と思われる怒鳴り声が聞こえてくる。 「どした?」 「·····最中だった」 「バカ」 両親や兄弟がいない家に彼氏と二人きりとなれば察するべきだったのだが、空気を読む事なく沙乃は扉を開けてしまったのだ。 ーーーーー 「普通ノックも無しで開ける?!」 「すんません·······はい、すんません」 すっかり萎えてしまったのだろう。その後、明奈と陽介は直ぐに着替えて一階に降り、今現在ソファーに座り沙乃に説教していた。 その金髪のショートボブヘアーは童顔の明奈にはあまり似合わないかな·····などと説教を喰らいながらも頭の中でぼんやりと沙乃は考えていた。 「ちょっと!聞いてんの!?」 「········聞いてます」 激怒している明奈の顔は阿修羅神の様で、沙乃は恐ろしさを感じた。
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