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「あ、そうだ。ちょっといい?」
「ん?何?」
沙乃は聖月の手を引いて鞄を持ち、ベランダに来た。
「····星スゴイね。」
「本当」
ベランダを開けると空は晴天で無数の星が光り輝いていた。
都会の住宅地の中でこんなに綺麗に星が見えるのは珍しい事だった。
ベランダに腰掛けた二人は暫くその美しい星々に魅入っていた。
「····じゃなくて!ツキ、これ」
ハッと本来の目的を思い出した沙乃は鞄から青いリボンが巻かれた小さな箱を取り出した。
「ちょっと早いけど、ハッピーバースデー」
聖月にプレゼントを渡すのが待ちきれなかった。
こんなプレゼントを渡すのを皆に見られるのがちょっと恥ずかしいのも理由の一つだ。
「······開けていい?」
そう聖月が聞くとなどことなく緊張した面持ちで首を縦に振った。
シュルリとリボンが解かれ箱の蓋を開けると逆さ十字が彫られたシルバーリング。
「男に指輪送るとか変かな?」
一ヶ月前から考えて選んだプレゼント。ネックレスだときっと他の子と被るだろう。
悩んだ末に選んだのは市内中心部に行った時に 見つけた路地裏の小さなお店。
今、女性が男性に指輪を送るのが密かな流行りだとそこの店の店長に言われつい買ってしまったのがこの指輪だ。
「変じゃないよ。ありがとう」
少し照れ臭そうに礼を言った聖月は左手の中指に指輪をはめた。
サイズも本人にピッタリとはまっており、サイズが合っているか不安だった選んだ沙乃自身はホッとしていた。
「···ツキには色々お世話になってるからね。」
「どうしたの?いきなり。」
空を眺めながら沙乃は少し考えた。
「昔話したの覚えてる?あたしの昔の初恋相手。」
6歳の頃まで住んでいた街で出会った男の子。
「俺に似てる子の話?」
「····ぅん」
最近になって夢に出てくるんだ。
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