534人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
一学期の終わり頃、おれは神無月の席の前の加藤に声をかけた。
こいつは同じサッカー部員だ。
「な~。加藤。お前の席、おれに譲らね?」
「はぁ?なんで?」
あっけに取られたように加藤がおれを見る。
「神無月、頭いいから。勉強教えて貰えそうじゃん?」
「いや、ムリだろ。あいつしゃべらないぞ、マジで。おれ、続けて3言以上話したの聞いたことないぞ。」
お前なんかに話す必要ないだろ。
なんて思いながらにこにこして言う。
「3000円でどうよ。」
加藤が嫌そうに顔をしかめる。
「お前、何?神無月に惚れてるの?ホモなの?」
「いや?違うけど。」
そんな軽い気持ちだったらいいんだけどな。
「いや、おかしいだろ。」
おれはわんこみたいって言われる顔で笑って言った。
「神無月の前の席にいたい加藤はホモ?」
「いや、違うし!!」
ムキになった加藤に畳みかける。
「んじゃいいじゃん。」
「ああ~なんかもやもやする。」
こういう時は迷わずBETだよな。
「じゃあ4000円で。」
「マジ?マジなの?」
おれはへらへらと笑うと財布から1000円札を4枚引っ張り出した。
「ほい。」
高校生は現生に弱いよな。差し出す金を加藤はさっと取った。
「もう1枚?」
加藤がおれを試すみたいに言う。
おれはへらりと笑うと、もう1枚札を出した。
「交渉成立?」
加藤は頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!