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そして、週が明けた月曜日。 少し憂鬱な気分で、いつも通りのメイクをする。 と言っても、ファンデーションに眉毛を書くだけの簡単メイク。 ナチュラルメイクにも届かない、手抜メイク。 手入れしていない、取れかけパーマの髪をギュッと縛り、頭のてっぺんでお団子を作る。 これが一番楽で、キチンと見える。それだけの理由。 そして最後にメガネ。 もうここ数年、オシャレとは程遠いスタイル。 “干物女”、そんな言葉がぴったりだ。 ご紹介遅れましたが、ワタクシ、細川千歳(ホソカワチトセ)と申します。 年齢は…ついに30歳。 彼氏の有無は今までのお話でお分かりの通り…。 結婚したいけどなかなかできずにいるアラサー女です。 「おっはようございます!先輩」 底抜けに明るい挨拶とともに登場したのは……坂崎君。 相変わらず可愛い笑顔で、通りすがりの女性は頬を染めて振り返っています。 彼、坂崎悠真(サカザキユウマ)、社会人3年目の24歳。 身長は175センチ(って言ってたな、確か)。 少し長めのふんわりとした茶色い髪。 長い睫毛にくりっとした瞳はくっきり二重で、くりくりと黒目がちで。 鼻筋はすっきり通っていて、唇は薄めで淡いピンク色。 肌はきめ細やかで、陶磁器みたい。 スタイルも良くて、可愛い顔の割にしっかりと筋肉は付いていた(確認済み)。 性格も人懐っこくて、男女ともに人気あり。 ────でも。 意外にも小悪魔系で、驚愕したのがつい一昨日のこと。 「んーーーー、いい匂い」 ぎゅーっと私を抱きしめて、匂いを嗅いでいる…隣の席の後輩。 「うわっ!ちょっと、何すんの!!ここ、会社だよ!!」 思い切り両腕をつっぱり、抱きついてくる坂崎君を突き飛ばす。 「つれないなぁ、先輩」 意味ありげに微笑む坂崎君、チラリと小悪魔がはみ出てますよ。 「……僕と先輩の仲じゃないですか」 こっそりと耳元でそう囁かれ、思わず飛びのいた。 な、な、な、な、なんなのよーーーー!!!!もうっ!!! イラつくのに言い返せないのが更に悔しい。
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