9043人が本棚に入れています
本棚に追加
/353ページ
時折うざったい坂崎君をなんとか交わしながら、やっと迎えた金曜日。
私は残業にならないよう、デスクに積み重なる書類を処理していく。
「先輩、今夜飲み会でしたよね?」
「そうだけど?」
坂崎君は上から下まで私を意味ありげに見る。
「男性もいるって言ってたけど、特に気になる人がいるわけじゃないんですね」
と、くすくす笑う。
まぁ、いつもとおんなじ女子力のカケラもない格好ですけど、それが何か!?
いちいち嫌みなヤツ!!
私は鼻をフンと慣らし、坂崎君を睨んでまたパソコンへ視線を戻す。
「じゃあ、僕は今日外回りなので、先輩も残業にならないように頑張ってくださいね」
坂崎君は立ち上がりビジネスバッグを持った。
「あ、うん。坂崎君も頑張ってね」
「はい!」
嬉しそうにキラースマイルを私に向けると小さく手を振って、部屋を出て行った。
坂崎君は取引先にも受けがいい。
仕事もきっちりこなすし、営業成績もいい。
密かに、健吾先輩と重ねて見ていたりもする。
でも、恋愛となると…。
そういう対象ではないことだけは確か。
「よし、頑張ろう」
軽く両頬を叩いて、パソコンへと集中した。
最初のコメントを投稿しよう!