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25歳だった5年前の夏。
私はお盆休みを利用して帰省していた。
つい最近まで付き合っていた彼氏とも例のアレルギーで一週間で別れ、夏休みの予定がすっぽりと空いてしまったから。
少し自棄気味だった私。
1年ぶりに帰った実家には……誰もいなかった。
着いた日に、旅行鞄を下げた両親が私に言った。
「仙台まで初盆に行くから、ついでに観光してくる~」
初盆と言っても、遠い親戚らしい。
のんびり母の手料理で過ごそうと思っていた夏休みの計画も儚く散った。
「……いってらっしゃい」
結局、ゴロゴロと実家で過ごす羽目になったのだが…。
「あ、メグ、お帰り~」
メグの部屋でマンガ片手に缶チューハイを飲む私。
思った以上にマンガにハマってしまい、視線はマンガに落としたまま、この部屋の持ち主のメグに声をかける。
「………何やってんだよ、千歳」
不機嫌そうな声は想定内。
メグもちょうど帰省していると親から聞いていた。
「うちの親、今日から法事に行っちゃって暇なんだよね~」
持ってきたスナック菓子に手を伸ばしたところで、メグを振り返る。
仕事柄か、相変わらず短い髪をタオルでごしごし拭きながら、眉根を寄せるメグ。
お風呂あがりらしく、上半身裸でひざ丈の短パンを履いていた。
「…うちも今日から旅行行ってるんだけど」
ストンと私の横にメグは座った。
その拍子にソファーが沈む。
「え!?そうなの?じゃあ、ご飯がない……」
メグのおばちゃんの手料理を期待していた分、ショックで肩を落とす。
「お前、またベランダから入ってきたの?」
「うん。その方が近いし」
しれっと答える私に、メグは深いため息。
「もう若くないんだし、無理するなよ」
「はいはい」
不貞腐れてマンガに視線を戻すが、ふと視界の端に見えたメグの裸。
うわぁ~!
綺麗に筋肉が付いた、メグの上半身。
筋肉質というよりもうマッチョに近いものがある。
「…割れてる」
思わずポコポコと割れた腹筋をなぞる。
「いい体、してるのね~」
「ま、体鍛えるのが趣味だし?」
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