9042人が本棚に入れています
本棚に追加
「千歳────お前……!」
いつの間に起きたのか、息を飲むようなメグの声が背後から聞こえた。
立ち上がった際に、シーツに残った赤いシミ。
久しぶり過ぎて出血したみたい。
それを見てメグは、口元に手を当てたまま言葉を失っていた。
「───初めて……だったのか?」
「えぇと…なんて言うか…その」
そ、そうだよね、そう思っちゃうよね。
「お、俺、お前のこと─────」
「いやいやいや!」
慌ててメグの言葉を遮る。
責任感の強いメグのことだ。
きっと気にして責任取るだのなんだの言うつもりなんだろう。
悲しいくらい、メグの思考回路は理解している。
「き、気にしないで!久しぶりなだけだから!」
ベッドから無理やりメグを押しやりシーツを剥ぐと、そのままそれを体に巻き付け、脱ぎ散らかされた自分の服を拾うと、メグの部屋を出て、洗面所へと足を運ぶ。
巻き付けたシーツを体からはずし、汚れた部分をゴシゴシと洗う。
シミが消えたところでシーツを洗濯機に押し込みスイッチを入れた。
「…何やってんだ、私」
回る洗濯機の音を聞きながら、服を着て、逞しいメグの体を思い出す。
どうして蕁麻疹出なかったんだろう…?
先週、彼氏相手に全身蕁麻疹に覆われたはずの私の体は、メグに抱かれた後も変化がない。
メグの事が好き…だから?
そう思って頭を振る。
今までメグをそういう対象で考えたことは一度もない。
だったらどうして…?
彼氏は駄目で、メグならいいの?
考えてもなんの答えを出ない状態で、私は洗面所で座り込み、頭を抱えた。
「………大丈夫か?」
いつの間にかメグが洗面所まで来ていた。
メグはすでに服を着ていた。
「千歳…」
メグの声は震えていた。
あぁ、もうこの居心地のいい幼馴染の関係は壊れてしまったんだ。
もうあの頃には戻れない。
「メグ…ごめんね!」
私はそれだけ言うと、洗面所を、相馬家を飛び出した。
「おい!千歳っ!!」
慌てたようなメグの声が聞こえたけど、私は足を止めることはなかった。
そのまま自宅に帰ると、荷物を持って自分のアパートに帰った。
最初のコメントを投稿しよう!