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不審な目、お気の毒そうに俺を見る目をチクチク感じながら、なんとかチェックインを済ませ、部屋までたどり着いた。
「よいしょっと」
人の気も知らずグースカと眠る千歳を投げるようにベッドに下ろす。
「…起きないのかよ」
手荒にベッドに下ろしたにも関わらず、起きることのない千歳。
少しもぞもぞと動いたが、ベッドの感覚に安心したようにまたすやすやと眠っている。
ふと視線を落とすと、スカートが少しまくれ上がり、白い太ももが露わになっていた。
おいおい、勘弁してくれよ……。
目を逸らせながら布団をそっと掛ける。
「ん……メグ……?」
起きたか?と近寄り、ベッドに腰をおろす。
「メグ~……」
「うわぁ!」
いきなり千歳の細い腕が伸びてきたかと思ったら、そのまま腰をホールドされてしまった。
「お、おい、千歳っ!」
焦って千歳を見れば………また寝てるし────。
くっそー!
酔っ払いに振り回されて一喜一憂している俺。
「……ごめんね……メグ……」
ふと千歳を見れば、目もとから一筋の涙が流れていた。
───ごめんね…か。
人差し指でそっとその涙を拭った。
「───お前は後悔してるのか?」
暗い部屋に響いた俺の声。
お団子頭の千歳の頭をそっと撫でると、ふにゃっと千歳の寝顔が柔らかくなった。
もう何年も見慣れた寝顔を、可愛いと思ってしまう。
これ以上……ここにいるのは無理だ。
俺の腹の前で組まれている腕をそっと離す。
眠っていて力のないその腕はいとも簡単に離れた。
そっと千歳の額にキスを落とすと、そのまま部屋を出た。
俺の理性が保つうちにここから離れよう。
─────過ちはあの一晩限りだ。
「信司のとこにでも泊めてもらうかぁ…」
ポケットから携帯を取り出すと、信司のアドレスをタップした。
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