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『……もしもし』
トーンの低い、メグの声。
うわ、これ、寝起きだ~。
声のトーンだけでも相手の状態が分かってしまう、さすが28年の付き合い。
って、今はそれ、どうでもいい!
「メグ!!ごめんなさーい!!!!」
『………』
しばしの沈黙。
『……あぁ、千歳か。もう起きたのか?』
「はいっ!迷惑かけて、本当にごめんなさいっ!!」
もう、謝ること以外、私には選択肢はなかった。
『プッ………別にいいよ、お前なら迷惑かけられ慣れてるし』
「……そうですね」
力なく「ははは」と笑っておいた。
「メグは信司のとこに泊ったの?」
『あぁ、急なことだったし、渋々だったけどな───っておいっ』
モガモガと雑音がしたかと思うと、また突然声がした。
「ど、どうかした!?」
『……おい、細川。こっちは迷惑かけられ慣れてないんで』
思わずヒィィっと声を上げたくなるくらい低いトーンで信司の声が聞こえた。
「あ、し、信司!!ごめん!!本当ごめん!」
『悪いって思うなら、ちゃんと相馬にお詫びしろ。
っていうかもう、マジお前ら付き合えよ。
一緒にホテル泊ればいいものの、もう……なんだよ全く…はぁ…』
呆れたような信司のため息が聞こえたところで、またメグに変わった。
『…あいつ、彼女が泊りにくる予定だったらしくて、えらくご機嫌ナナメなんだよ』
「うわ…それはとても、申し訳ない……絶賛猛反省中デス」
『まぁ、いいや。俺もしばらくこっちにいるし、そのうちなんか奢れ』
「はい、それはもう……メグ様、信司様の好きなところへお連れいたします」
相手には見えないのは分かっていてもペコペコ頭を下げてしまう、電話マジック。
電話の向こうから『俺を巻き込むな。二人で行けっ!』と信司の怒号が聞こえて苦笑い。
『じゃ、チェックアウト、よろしく~』
「うん。本当ごめんね!ありがとう!!」
また深々と頭を下げ、通話は終了した。
────普通の会話ができた。
メグが気を遣ってくれているんだろう。
あの頃と変わらず、接してくれたメグに感謝した。
「とりあえず………帰って、寝よう」
軽く身支度し、家路に着いた。
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