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私の初めては20歳の時。 相手は就職してすぐ私の上司になった8つ年上の人。 彼は営業マンで私は彼を補助する営業事務だった。 その人は知り合った時すでに彼女がいて、しばらくしてから婚約、次の春には異動になり、その後結婚した。 名前は、高杉健吾(タカスギケンゴ)さん。 新社会人の私から見たら、とっても大人でキラキラ眩しかった。 顔もかっこいいし、スタイルもいいし、背も高いし、仕事もできるし、とにかく女性社員の憧れの的だった。 私はそんな人のそばにいつもいれて、毎日楽しかった。 彼女がいるのも知っていたけど、いい男にはそんな女性がいても不思議じゃないし。 そんなこともすんなり受け入れられるくらい、素敵な男性。 だからね。 健吾先輩が異動になる前にお願いしたんだ。 断れるのが前提で。 「私のハジメテ、もらってください」 もちろん即答で断られた。 それから何回もお願いして、やっとOKをもらった。 後腐れなしで。 今回限りで。 恋愛感情は持たない。 誰にも秘密。 健吾先輩の幸せは絶対に壊さない約束をして、抱いてもらった。 「よくもまぁ、遊び相手の処女もらう気になりましたね」 呆れたように坂崎君が呟く。 「まぁ、私の粘り勝ちみたいな」 私も若かったしね。 ハジメテをささげるなら、絶対に素敵な男性って決めていた。 だから、健吾先輩が良かった。 ほんのり灯った恋心は隠したまま、健吾先輩と一夜を共にした。 何もかも初めての私を優しくリードしてくれた健吾先輩。 例えるなら、バラの花びらを一枚ずつそっと剥がしていくような。 自分でもびっくりするような甘い声が出た。 今までに味わったことのない感覚。 痺れるような快感の波に何度もさらわれて。 優しく、激しく、本当にとろけるように。 終わった後も、まるで恋人のようにそっと抱きしめてくれて。 次の日の朝は、健吾先輩の腕枕で軽いキスで目覚めた。 その朝感じたものは………。 健吾先輩の腕の中という喜びと、健吾先輩の彼女に対する罪悪感。 ───キレイでちょっぴり苦い、私の想い出。
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